津田貴司『湿度計』


水の滴りに耳を澄ます 水の気配に息を澄ます
初夏の益子から抽出された 循環する五つの水の風景


1、朝の水
早朝の STARNET 近くの林の中、湧き水が滴る谷の小道にて夏鳥たちのさえずりを収録。
腐葉土を透過して集まってきた水滴が谷を潤し、鳥たちの水飲み場になります。
少しずつ陽がのぼり、木漏れ日が揺れています。


2、畦道にて
木工作家・高山秀樹さんに案内していただき、高山さんのアトリエ付近でフィールドレコーディングしました。真新しい水が張られたばかりの瑞々しい水田が、陽の光でゆっくりと暖まり、蛙が鳴き始めます。
背中を撫でる風が暖かく、初夏の訪れを感じます。


3、湿度計
ピアノや水琴窟、鳥や虫の声などに聴こえる音は、全て水滴の音を電子変調したものです。
インスタレーションでは、完成したばかりの STARNET RECODE の梁に設置された14台のスピーカーから音がランダムに鳴る仕掛けでした。音の森では、様々な生物が息衝き、水は循環し、時間は螺旋状に進みます。
RECODE の外では虫や鳥が鳴いていて、音の風景は高館山へと続いていきます。


4、蒼
夕闇迫る STARNET ZONE の中央にステレオマイクを立て、その周囲を裸足になって歩き回りながら、水の入ったガラス瓶や巻貝の貝殻で即興演奏しました。その音源を倍音律に電子変調し、ミキシングの段階で重ねました。
陽が陰り、蒼い静寂の気配が辺りを満たします。


5、夜の水
陽が落ちると、STARNET には田畑から蛙の合唱が聴こえてきます。
STARNET RECODE の大黒柱となった樹は樹齢200年ほど、民家の屋根を支えて200年ほど。
その長い間に樹が聴いてきた水の音をイメージしました。
夜は深く、時間が満ち、音はねっとりと甘く沈澱していきます。



全5曲入りCD 43分53秒 定価:¥2,500(税込み) 製作販売 STARNET MUZIK(有限会社 ビーケーデザインスタジオ)